10月8日(土) 地域リハネット桜井を開催しましたのでこちらにまとめます。
今回は国立社会保障人口問題研究所より川越雅弘先生をお招きし、多職種協働による退院支援の重要性についてご講演いただきました。
奈良県は「まさに全国平均」という人口構造比で推移していきます。
桜井市も同様全国平均的な推移です(中川作成)
高齢化と一般的に言われますが、その65歳以上がただ増加するのではなく、85歳以上のみが増大するというところがポイントです。
(65-74層、75-84層はほぼ横ばいです)
上記医療ニーズと介護ニーズをご覧になるとわかるように、85歳以上が医療ニーズの3割、介護ニーズの5割を占めています。
桜井市においても今後増えるのは85歳以上層であり、2040年には人口構造比率は3倍化します。(ニーズも人口比あたり3倍化することが示唆されます)
・85歳以上人口が急増。その結果、独居高齢者や認知症高齢者が増加、介護サービス受給者は増える一方で、労働力人口(支える側)は減少
→介護予防、元気高齢者の社会参加、マネジメント力強化が推進されます。
・85歳以上高齢者は半数が介護サービスを利用。加えて、医療や生活支援に対するニーズも、医療リスクも高い
→包括的なサービス提供が必要となります。
・85歳以上高齢者の場合、健康面、心身機能面、IADL/ADL面など、多領域に生活課題を有している場合も多い。また、1課題(例:誤嚥性肺炎の再発予防)に対しても多職種の関与が必要
→多職種協働が必然となります。
・介護費用も8兆円を超え、65歳以上の介護保険料も月額約5.5千円に上昇。介護保険だけで、高齢者の生活全てを支えきることは困難
→効果的なサービス提供、機能分化と連携が求められます。
医療ニーズ・介護ニーズに増大に合わせて病床数が増えるわけではないため、回転率向上(在院日数削減)が求められます。
退院支援の質の向上に求められるのは在宅チームとの連携。
特別指示書は退院支援強化のための報酬でもあります。
先日視察した大牟田市では、退院支援におけ退院前カンファレンスにて地域住民も参加し、支えあい活動(生活支援)を担います。
入院患者の特性
急性期病床では肺炎・心疾患、回復期病床では脳梗塞・頚部骨折、療養病床では頚部骨折・脳出血・心疾患で半数近く占めます。
そして肺炎・呼吸器疾患で入院される9割は既に介護保険受給者であり、脳梗塞・脳出血で入院される4割は再発者です。
個別ケア会議をしっかり積み重ね、自立支援を促進し、入退院時の連携強化が求められます。
特に看護師・リハ職・栄養士など専門職によるアセスメントを導入することで再入院予防や再発予防が促進できます。
以上、簡単ですが、10月8日のまとめをご紹介します。
資料全文ほしい方はご一報ください。
pt.f198lulu@gmail.com(中川)
中川様
お世話になります。丁寧かつ、詳細な説明ありがとうございました。
「特別指示書は退院支援強化のための報酬」という文言だけでは、詳細がわからず、少し違和感を感じましたので、ご教授いただけたらと思いました。
お忙しい中、誠にありがとうございました。
エール訪問看護リハビリステーション
根木 清美
中川様
お世話になっております。
訪問看護認定看護師の根木と申します。
中川様のご活躍にいつも感服しております。
今回開催されました「地域リハネット 桜井」の議事を読ませていただきました。一つだけ詳細をお願いしたいと思い、メールいたしました。
「特別指示書は退院支援強化のための報酬」ということについての川越先生のご指南内容と、中川様のお考えについて教えていただけたらと思います。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
エール訪問看護リハビリステーション
看護師:根木 清美
根木様
コメントありがとうございます。
前提として診療報酬改定には医療費削減目的がありますが、退院支援の加速は医療費の大幅な削減を果たすことを意識したうえで、特別訪問看護指示書に「退院直後」の項目が加わりました。
実際に日本の急性期在院日数と諸先進国の在院日数はけた違いで、これらの解消が今後の大きな課題になっています。
退院支援の質の向上には在宅チームとの連携が必要と言われており、在宅チームとの多職種協働ケアマネジメントは退院3か月後の自立度向上も認めています。(川越雅弘他:退院後のケアマネジメントプロセスへのリハ専門職の介入効果,厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業)
さて上記を前提にして特別指示書の考えですが、川越先生はスライドにあるよう「円滑な地域移行」と「柔軟な訪問看護提供」を促進するという考えを示しています。
(これは特別指示書のみをさしているわけではなく、近年の退院支援における加算のすべてを指しています)
柔軟な訪問看護提供というのは非常に重要です。こうした退院直後の訪問看護の在り方は歴史の長いアメリカやフランス・イギリスの取り組みが参考になっていますが、各国では訪問看護サービスが数パターンあり、柔軟な訪問看護のみを提供する部門もあります。
(柔軟な対応が求められるのは退院直後や人生の最終段階を指します)
私の考えですが、退院直後の再入院を防ぐアウトカムは「一定量の訪問サービス」と「多職種介入」、「カンファレンスの有無」となっています。
慢性疾患患者の退院後一か月以内の高密度の介入のみ優位的に再入院を防いだという報告もあります。(Verhaegh K, et al: Transitional care interventions prevent hospital readmissions for adults with chronic illness. )
再入院が多いのは退院後7-14日・15-31日間です。ですので、それまでの間に自己管理・家族管理力を高めることができれば安定した在宅生活への移行が可能と考えます。
心不全での再入院予防には多職種介入が優位的な効果を示すエビデンスがあります。(これは国内外多数報告されています)
そして質的な部分は本人・家族が退院して療養生活をスムーズ にスタートするために 24 時間体制で「何かあったら連絡し、相談できる」という安心の提供だと思います。
回数にとらわれない柔軟な訪問サービスの提供が可能となることで、「高密度の介入」「退院直後の最も本人・家族の不安な時期のカバー」が可能となることが特別指示書(特に2016年の改定後)の意義だと思います。
中川